大判例

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東京地方裁判所 昭和41年(ワ)7980号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕以上の認定事実に基いて大山の行動の当否を考えるに、原告主張のようにキミが安全な姿勢で飛び乗り終つたものを大山が抱き付いた結果転落したと認むべきではないから、大山の行動に責むべきものはない。なるほど大山がキミの身体を掴んだことにより、握棒を必死に握り締めていたキミの右手には、掴まなかつた場合に比し遙かに強い力(大山の体重と列車の加速度との積)が加えられたことになるので、その結果右手の離されるのがヨリ早くなつたとはいえようが、前認定((8)段)のようにキミが不安定な姿勢でぶら下つていた以上転落は既に始まつていたと見うるのであつて、大山の行動の結果転落したと評価すべきものではない。また、階段の上り口付近に立つていなかつたためキミの飛乗りを制止できなかつたという点も、前認定((2)(3)段)のような経過で乗客誘導と列車進行監視のためホーム上の他の地点に在つたことが認められる以上、旅客掛としての注意義務に違反したということはできない。

以上いずれの点からも、大山の過失を認めることはできず、これを前提とする原告の主張は理由がない。

四、進んで請求原因第二項(三)について判断するに、日本国有鉄道は、日本国有鉄道法に基づき、それまで国有鉄道事業特別会計を以て国が運営していた事業を代つて運営する目的を以て設立せられた公共企業体であつて、その施設は、国家賠償法第二条にいわゆる「公の営造物」にあたると解すべきものである。(従つて、同条の適用がないとの被告主張は採用しえない。)

そこで、本件ホームにつき、設置、管理の瑕疵があつたとの原告ら主張について案ずるに、検証の結果によれば、本件ホームは階段上り口から北に(すなわち柱から前方)四・五米の線を境に南側(階段寄り)が新ホーム、北側が旧ホームと二分され、ただ右の線から階段寄り二・九米幅の部分に一段高い新ホームから旧ホームへの連結のため勾配がついているが、前節(4)段認定の飛乗り地点は、右の境界線の三〇糎手前勾配の殆んど終ろうとするあたりであるので、前節(9)段認定のように、それから相当進行したところに当る転落地点は、当然旧ホームに関係することになる。

<証拠略>によれば、新ホーム(勾配のない部分)の高さは軌条面から七六糎、旧ホームは同じく六五糎、ホームの笠石(検証の結果によれば擁壁の側面より少しはみ出していることが明らかである。)の外側面とオハ六〇形式の客車デツキ踏板の外側面との間隔は一三糎、旧ホームの平面と踏板の平面との高さの差は三一糎であることが認められる。そして乙第三〇号証の二によれば、右踏板が車体の下面とほぼ同じであること明らかであつて、従つて、ホームと車体の下面とは新ホームで二〇糎近く、旧ホームでは三〇糎ほども隙間があることになるのであつて、身体が斜めになればここからの転落を許さぬものではないと思われる。かつ、旧ホームの高さ六五糎が日本国有鉄道建設規程所定の基準を満していないことは、当事者間に争いがないのである。

然しながら、<証拠略>によれば、ホームの高さは建設規程に定められた七六糎に改良されるまでは現状の六五糎でも違法ではないことが明らかであるし、かりに、瑕疵ありとしても、前節認定のように、キミは車体とホームとの間隙から転落したのではなく、身体が反転して車体後方の連結器のある空間に入つて後転落したと認められるのであるから、右の瑕疵はキミの死亡と因果関係あるものと認め難い。キミが踏板に足をかけそこなつたことは、踏板がホームより高い平面にあつたことと因果関係がないとはいえないが、前節(6)段にあげた事情(編註・列車の速度が時速十一粁くらいであること、キミが眼病治療中であつたこと)もあり、根本の原因はキミ自身の飛乗りにあつたというべきなのであるから、この程度の踏板の高さにキミの死亡に対する相当因果関係を認めることはできない。

以上のとおりであつて、国家賠償法第二条ないし民法第七一七条第一項に基づく原告の主張も理由なしといわざるを得ない。(倉田卓次 浅田潤一 原田和徳)

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